国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

鈴木宗男事件に関わる「国策捜査」に巻き込まれた佐藤優の手記
●「国策捜査」の存在を具体的に知ることができた
●外務官僚の情報屋としての仕事の描写に興味があった。本の中で何度も繰り返す「国益」という言葉。国益を軸に、国家間、組織間でのかけひきがある。情報屋個人の美学、仕事に対する姿勢も文章の中でうかがえる。
●検事との激しいやりとりや、所属する外務省や同僚などから裏切られる境遇にある佐藤であるが国策捜査の渦中に入った自分の位置を冷静に見つける。
●検事との通い合い。お互い知性の高い職人としてのシンパシーがみれる。 
鈴木宗男を政治家として尊敬している。拘置を延長する義理立てがすごい。
鈴木宗男事件にかかわる国策捜査を検事とのやりとりで分析した場面は明快だった。時代の転換をはかるための犠牲、時代にけじめをつけるための事件。ケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線へ。国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへ。ナショナリズムが高揚するとより過激な判断が支持される。

鈴木宗男のほか、当時ロシア外交を主導していた森、橋本元首相に対する尊敬があるという。書籍化する予定とのこと。