国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

鈴木宗男事件に関わる「国策捜査」に巻き込まれた佐藤優の手記
●「国策捜査」の存在を具体的に知ることができた
●外務官僚の情報屋としての仕事の描写に興味があった。本の中で何度も繰り返す「国益」という言葉。国益を軸に、国家間、組織間でのかけひきがある。情報屋個人の美学、仕事に対する姿勢も文章の中でうかがえる。
●検事との激しいやりとりや、所属する外務省や同僚などから裏切られる境遇にある佐藤であるが国策捜査の渦中に入った自分の位置を冷静に見つける。
●検事との通い合い。お互い知性の高い職人としてのシンパシーがみれる。 
鈴木宗男を政治家として尊敬している。拘置を延長する義理立てがすごい。
鈴木宗男事件にかかわる国策捜査を検事とのやりとりで分析した場面は明快だった。時代の転換をはかるための犠牲、時代にけじめをつけるための事件。ケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線へ。国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへ。ナショナリズムが高揚するとより過激な判断が支持される。

鈴木宗男のほか、当時ロシア外交を主導していた森、橋本元首相に対する尊敬があるという。書籍化する予定とのこと。

ぼくらの頭脳の鍛え方

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

佐藤優の存在を知った本。

アフリカの蹄

アフリカの蹄 (講談社文庫)

アフリカの蹄 (講談社文庫)

南アフリカでの人種差別社会で絶滅したはずの天然痘が流行する。黒人のスラムだけで流行する天然痘南アフリカの極右団体が組織的に流行させたものだった。ねらいは黒人のスラムを強制移住させること。
スラムでの診療をしていた日本人留学生は、天然痘の流行、差別、極右団体との闘争に巻き込まれる。

アパルトヘイトが行われていた南アフリカの状況が少しイメージできた。
●白人でもなく黒人でもない日本人である主人公が、一個人としてスラムの医師や恋人、患者との交流を通して最終的には共に命がけで差別に立ち向かう姿が印象的だった。個人との向き合いを通したからこそ巨大な課題に取り組むことができたのではないか。

ケーブ・ベアの一族

エイラ 地上の旅人(1) ケーブ・ベアの一族  上

エイラ 地上の旅人(1) ケーブ・ベアの一族 上

エイラ 地上の旅人(2) ケーブ・ベアの一族 下

エイラ 地上の旅人(2) ケーブ・ベアの一族 下

クロマニョン人のエイラが、ネアンダルタールの一族に育てられる話。

●異種族、女の立場などの逆境に耐えるエイラに感動する。
●育ての親や理解のある族長の存在に支えられ、能力を発揮する。
●絶滅の道を歩むネアンダルタールとクロマニョンが同じ時期に生息していた歴史的事実のおもしろさ。
 ・言葉が豊富
 ・泣く、笑うなどの感情が豊富
 ・背が高く、運動能力が高い。(器用)
●族長が変わったことから、子供と離れ離れにさせられ、自分と同じ種族とであうための旅にでる。 

ダブルプレー

ダブルプレー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-45)

ダブルプレー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-45)

●ジャッキーとボディガードの主人公との絆、それを糧に主人公が心を取り戻す様が描かれている
●パーカーが描く作品にあるものと同じものが主題
●殺し屋のキャッシュとの心の繋がりは、スペンサーとホークのよう

●好きな表現 
ローレンのこと、ジャッキーや自分への暗殺計画が解決して戦争や離婚で傷ついた心をとりもどした主人公。ナイトゲームでの球場で”あらゆる物があるべき場所にある””全てがあるべき姿だ”と思う。