人はなぜツール・ド・フランスに魅せられるのか[文庫] (小学館文庫)

著者は2000年からツールを取材する女性記者。

●アームストロングはツールで優勝するための運を持っている。
03年、ぺロキとの争いで、突然前を行くぺロキが落車。バランスを崩したランスは舗道から外れるも草地を抜けてレースへ復帰。


●ツールの山岳ステージは「レッドゾーン」
「男というものはギリギリのところを生きるものだ。たとえ平穏な生活をして幸せであっても、心のどこかでそれを破壊し、ギリギリのところへ自分を追い込みたくなる衝動に駆られる。ツールの山岳ステージを走る男たちを見て感動を覚えるとしたら、そういうギリギリのところで生きる男たちを、ある種、尊敬し、憧れている面もあるのではないか」

●ヨーロッパで修行して力を磨いた別府史之
しだいに力をつけていた別府は練習走行中に溝にはまり30針の傷を顔に負ってしまう。
運が悪いことに結果を出すべく意気込んでいた日本選手権の直前だった。

「僕は一生懸命やって怪我をした。どうしたら、この傷が生きるのかって考えたときに、これはやっぱり走り続けるしかないって。それでこそ、この傷が生きるんだって。そのためには、今度の全日本選手権に絶対勝たなきゃならない。ここで出場すれば、まず自分自身には勝てると思う。でもレースに負けたら、自分には自転車のセンスがないと、そこで初めて諦め、自転車をやめようと思ったんです。」
包帯をぐるぐる巻きにしてフランスを出ようとしたら出国審査で追い返されてしまう。

腫れが引くのを待って日本にもどった別府は2位に4分の差をつけて、圧勝する。


●引退を優勝でかざる最終ステージ前の移動のTGVでランスに声をかける
筆者「今回、あなたはすごい選手だったとあらためて認識した。ある意味、私のツール人生は、あなたの人生だった。」
ランス「ありがとう、ありがとう」「でも」「人生は続く」